■ 担保設定の場合 |
|
(商法第 265条、75条、等) |
|
○ |
利益相反取引に当たるので必要 |
|
× |
利益相反取引に当たらないので不要 |
|
AとCの組み合わせの時注意
担保提供者A社の 代表取締役->甲、平取締役->乙 債務者B社の 代表取締役->乙、平取締役->甲の場合
A社の議事録必要
※外観上、取締役が自己会社と直接取引をしたり、第三者(会社等)を代表または代理して自己会社と取引を行う場合には、取締役会等承認が必要です。(例、債務の保証・担保の提供・金銭の貸付・売買等)近年、子会社をつくりグループ間で保証しあうケースが増えていますでご注意ください。
この場合の基本的な考えは、担保の提供・債務の保証をする等の、不利益をうける会社側(売買等では双方)の取締役会議事録等の添付が必要となります。
会社の利益と相反するか否かは、まず形式上該当するかどうかで判断しますが、形式上利益相反行為に該当(@の場合)しても、実質的に不利益ではないと判断される時は、取締役会の承認を要しないとする裁判例があります。逆に形式上不利益行為でなくても実質的には不利益行為であると判断される場合には、取締役会等の承諾を要し、不利益を被る会社は後日、取締役会等の承認の無いことについて、相手方等の悪意(利益相反行為に該当することを知っていたこと)を立証することにより無効を主張できるとする意見もあります。
前記Aの場合は、A社の代取甲はB社の代取ではない・代取ではあるけれども契約上おもてには出て来ないケースの場合ですが、形式的には利益相反取引ではないのでA社の取締役会等の承諾は基本的には不要ですが、実務上の扱いとしては、Bのように両社とも単に平取締役でありかつ代理権を行使しない場合(形式的・実質的に利益相反ではない場合)を除いて、甲がB社で株式の過半数を有し、実質的にB社を支配しているような場合は利益相反該当事例として扱うのが無難と思われます。
また、前記Cの場合では議事録の添付は不要とする考えがありますが(登記研究337号)、利益相反を実質的に判断する傾向にある判例や、会社と取締役個人との直接的な自己取引に類似する形態ともいえるところから、銀行実務としては、Aの場合以上に取締役会等の議事録の添付を求める方が、望ましいのではないかと考えます。 |
■ 取締役会議事録等の作成上の注意(法務局見解による) |
(代表取締役は、会社の届出印、他の役員は個人の実印を押印)
|
株式会社 |
取締役会での過半数による承認。自己取引となる取締役は、特別利害関係人となり議決権はないので定足数に算入されません。しかし上記のような会社間では利害関係にたつのは会社ですから、各取締役は特別利害関係人には該当せず、議決権を有しますので定足数に算入します。(昭和44行政先例)議事録には議長取締役他出席取締役が署名捺印し代表取締役の印は法務局に届け出た会社の代表者印を捺印します。(他の取締役は実印を押印し、印鑑証明書の添付が必要)
(例 1) 3名の取締役のうち、2名が利益相反の当事者の場合、取締役1名でも決議することができます。
(例 2) 双方の会社の取締役全員が同一人物の場合でも、取締役会は有効に成立し全員決議権を有します。 (利益が相反するのは会社間) |
有限会社 |
社員総会議事録となります。総社員の過半数の賛成かつ総社員の議決権の4分の3以上の決議による承認が必要となります。 特別利害関係に立つ取締役は、株式会社の取締役会と異なり、社員総会では社員としての議決権を有しますので、社員総会の定足数に算入します。議事録には議長取締役他出席取締役が署名捺印し代表取締役の印は法務局に届け出た会社の代表者印を捺印します。 (他の取締役は実印を押印し、印鑑証明書の添付が必要) |
合名会社 |
他の社員の過半数の決議が必要となります。 |
(合資会社) |
決議にかえて同意書でも可。 署名捺印要 業務執行社員は届け出印を他の社員は実印を押印。(印鑑証明書必要) |
医療法人 |
理事長との利益相反行為の場合、県への特別代理人選任手続きが必要となります。
※ ただし、相互に株や持分を4分の1を超えて保有しあっている会社(親子会社の関係)間では特別利害関係に該当するので、関係会社の議決権はありません。自己持分・自己保有の株式でも同じことが言えます。
※ 注意事項 取締役会等の議事録の『登記申請時の添付書類としては不要』が、即『契約行為たる保証行為等の手続き要件としても不要』、には必ずしもならないのでご注意ください。登記官は形式審査しかできないので、(根)抵当権設定契約書に署名された債務者B社の代表取締役甲と担保提供会社A社の代表取締役甲とが、同一人物か否か、実質審査権がないので、たとえ利益相反行為に該当すると思われても、議事録なしで登記が仕上がる事があります。しかし、銀行の手元には利益相反承諾としての取締役会等の議事録が備わっていなければなりません。備わっていない場合は後日無効を主張され、担保設定登記が無効となる場合もあります。 |
変更後の債務者 |
会社は設定者ではない |
会社が設定者 |
会社から取締役 |
× |
○ |
取締役から会社 |
△ |
△ |
会社に取締役をプラス |
× |
○ |
取締役に会社をプラス |
× |
× |
△:取締役の特定債務を会社が免責的に引き受ける場合必要。
■ 親子間の利益相反行為にご注意を |
最近相続対策等の為に、不動産を子や孫に生前贈与したり、親子で共有するケースが増えています。子供が未成年者で、父の債務の為に子の不動産を担保に提供する為には、家庭裁判所で特別代理人の選任を必要とし、特別代理人と母とが設定契約を結び登記をする事になります。このように親が債務者であったり、保証人である場合は利益相反行為となりますので、ご注意ください。 ただし、会社が債務の為に、会社の代表者である親とその子が担保を提供する場合は、親が保証人にならなければ利益相反とはなりません。その他親子で相続人となる場合にも、利益相反になる場合がありますので、ご注意ください。 ※ 遺産分割をする時 相続を放棄する時 |
|